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インフル疑いで病院に「行く時」「行かない時」

インフルエンザは嫌なものです。熱が高くなり、鼻が詰まってせきが出て、筋肉痛やだるさも襲ってきます。それでも「日ごろ健康な大人」なら、病院に行かなくても、たいていは自然に治るそうです。それでもなお、病院に急ぐべきなのはどんな時か。国際医療福祉大三田病院(東京都港区)の志賀隆救急部長が説明します。【毎日新聞医療プレミア】


 寒い季節になり、インフルエンザが大流行しています。国立感染症研究所によると、今月27日までの1週間で、全国で推計約222万6000人の患者が医療機関を受診したそうです。救急外来に運ばれる患者さんの中にもインフルエンザの方がよくみられるようになりました。今回は、インフルエンザの症状や対処法、いっしょに起こるかもしれない病気(合併症)について、ポイントを解説したいと思います。

 ◇どんな症状?

 インフルエンザが特に流行している時期に、「発熱」「のどの痛み」「せき」「鼻水」「筋肉痛」「頭痛」などの症状があったら、その人は「インフルエンザではないか」と考えます。

 さらに、流行期には、このほかのいろいろな症状が、インフルエンザによって起こることがあります。ですから医師は、「だるい」「ふらつきがある」などの症状を訴える患者さんに、インフルエンザの検査をすることもあります。

 先日も、若い女性の方が「仕事中にふらついて失神した」と救急車で搬送されてきました。体温は37.0度だったのですが、インフルエンザと診断しました。

 また、子どもの場合は、インフルエンザ患者の10~20%に胃腸炎の症状が出ることがあります。ですから流行期には、「嘔吐(おうと)」「下痢」などの胃腸症状があった場合にも、インフルエンザの可能性を考えます。

 ◇症状と診察結果で診断できる

 インフルエンザの流行期に、発熱した患者さんが来たら、医師は、症状や診察の結果から「インフルエンザです」と診断できます。

 その診断基準として、もっとも精度が高いのは「せきと発熱の症状が両方そろっていること」です。また、60歳以上の高齢者でみると、発熱、倦怠(けんたい)感、寒気がインフルエンザの診断に結び付く症状です。

 ◇検査は「感度」に限界

 一方、こうした診断のために、インフルエンザの検査は必ずしも必要ではありません。現在多くの医療機関で使用されている検査は、「抗原法」というやり方です。鼻の粘膜などに、インフルエンザウイルスに特有のたんぱく質(抗原)があるかどうかを調べ、15分程度で結果が出ます。

 この「抗原法」の検査について、159の研究を統合した分析があります。分析結果によると、感度(インフルエンザに感染した患者を検査して、結果が「陽性」=ウイルスあり=と出る割合)は62%と限られたものでした。また、症状が出てから間もないうちに検査をしても、結果が「陽性」とはなりにくいことも知られています。

 具体的には、症状が出て12時間以内に検査をすると、感度はわずか35%です。本当はインフルエンザの患者でも、3人に2人は「抗原」が検出されず、検査結果が「陰性」になるのです。さらに、発症から▽12~24時間で検査すると感度は66%▽24~48時間だと92%▽48時間を超えると59%――と、時間とともに感度が変わります。

 検査にはこうした限界があるため、多くの医療機関は、特に夜間や時間外などには、帰宅できるような比較的軽症な患者さんのインフルエンザの診断には抗原法での検査を行わず、診療をスムーズに進めることを優先する方針をとっています。

 私自身は、病院の通常診療時間内なら、たいていの患者さんに「インフルエンザの検査はできますが、精度は高くありません。流行期は症状から診断する方がむしろ正確です」と説明しています。さらに「検査をしなくても、抗インフルエンザ薬は処方できます。その薬の効果は、症状を半日~1日短くする程度です。頭痛などの副作用もあります」ともお伝えします。例外は、医療機関や学校に勤めているなどの事情で、公衆衛生の観点から検査が必要な人などです。

 ◇病院に急ぐべき時、家で寝ていてもよい時

 インフルエンザの流行期に、発熱やせきがある、日ごろは健康な成人の方が「病院を受診すべきか?」というのは簡単ではない質問かもしれません。

 一般的には、熱もあってつらいので、受診したい気持ちになるのではないかと思います。

 ただ、後述するように抗インフルエンザ薬の効果は限られたものです。基本的には、インフルエンザを含めた「風邪」などのウイルス感染への対処は、「自宅で、水分と、消化に良い食べ物をとって、眠って休み、熱がつらいときには『アセトアミノフェン』などの解熱剤を服用して過ごす」ということを勧めます。たいていは、これで自然に治るのです。

 病院を受診すると、別の感染性の疾患にかかる可能性がありますし、地域にインフルエンザがさらに広まってしまう心配もあります。ですので、日ごろ特別に病気を持っておらず、水分、お食事をとれる方は、自宅で療養することが一つの選択肢だと考えます。

 ただし▽様子がおかしい▽けいれんした――など意識や神経に問題がありそうな場合には「インフルエンザ脳症」の可能性があります。救急車などを使っての早めの受診が必要です。

 また、せきに加えて、緑や黄など色のついた「たん」がたくさん出ている▽顔色が悪い▽息が苦しくて歩くことができない――という場合には、インフルエンザの感染から肺炎になっている場合があります。このような場合はその日のうちに受診が必要です。

 意外なものとして「インフルエンザに感染した後には心筋梗塞(こうそく)のリスクが上がる」という結果を報告した研究もあります。ですので、インフルエンザは治ったけれど胸が痛い▽胸が押されるように感じる▽歩くと息苦しい――などの症状があれば、その日のうちに救急外来など医療機関を受診してください。

 ◇抗インフルエンザ薬は必要か?

 「タミフル」などに代表される抗インフルエンザ薬ですが、服用した場合、症状が短くなるのは、薬なしの場合に比べて半日~1日程度です。また、「症状が出てから24時間以内」に飲むことが勧められています。日本では「インフルエンザ⇒お医者さんから薬をもらおう!」ですが、他の国ではどうなのでしょうか?

 米国疾病対策予防センター(CDC)は、タミフルなどの抗インフルエンザ薬は「健康な成人には必ずしも必要でない」という立場をとっています。

 ではCDCは、どのような患者さんに対して、受診して抗インフルエンザ薬を処方してもらうことを勧めているのでしょうか? 以下にご紹介します。

 2歳未満の小児/65歳以上の高齢者/慢性疾患のある患者さん(ぜんそくなどの肺の病気、心臓の病気、腎臓の病気、肝臓の病気、血液の病気、神経の病気、糖尿病など)/免疫力が落ちている患者さん(薬剤によるものやHIVによるものなど)/妊婦や、出産後間もない方/20歳未満でサリチル酸系の薬剤を長期に服用している方/病的肥満/老人ホームなどの居住者

 ◇仕事や学校には、いつから戻れるのか?

 仕事や学校については、一般に「学校保健法」に準じて、休む期間を考えます。この法律は「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児は3日)を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としています。ですから、こちらを目安にしてください。また「インフルエンザが治った」という「治癒証明書」は、上記に沿っていれば必ずしも必要なく、「職場が求めることは望ましくない」などと、厚生労働省がアナウンスしています。

 いかがでしたでしょうか? 症状がある際には、我慢して職場や学校に行かないことが大切です。また、インフルエンザをはじめ風邪では、休息、栄養、睡眠が大事です。そして、つらい時は「アセトアミノフェン」などの解熱剤を使いましょう。手洗い、せきエチケット、マスクなどをうまく活用して予防をしていきましょう。また、ぜひワクチン接種を!

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